本屋に行くと「プレゼンテーション」に関する書籍がたくさん並んでいます。さまざまな企業が「プレゼンテーション」をテーマとする研修を行っています。
しかし・・・
「プレゼンはこうやればうまくいく!」という方法論は、まだ確立していないように思います。
特に、私たちが専門的に取り組む自治体職員(公務員)のプレゼンテーションについては、自治体の立ち位置や業務の特性ととらえた解説書はほとんどありません。
この記事では、私たちがこれまでに取り組んできたプレゼンテーション研修の内容をもとに、大人数に説明する場面や職場内での上司への提案など、様々な場面で行うプレゼンテーションに役立つ方法論をお伝えします。
こんな方におすすめ
- プレゼンのストーリーづくりに悩んでいる方
- 良いプレゼンを作る方法論を知りたい方
- 相手の心を動かすプレゼンの作り方を知りたい方
はじめに
いきなりですが、みなさんに質問です。
「今までに、何回くらいプレゼンテーションをやったことがありますか?」
① 頻繁にやっている
② 機会は多くないがやったことはある
③ 一度もやったことがない
研修の最初にこの質問を投げかけると、「一度もやったことがない」に手を挙げる方がいます。
それでは、そもそも「プレゼンテーション」とは何なのでしょう?
Wikipediaでは、次のように定義されています。
プレゼンテーション (英語: presentation) とは、情報伝達手段の一種で、聴衆に対して情報を提示し、理解・納得を得る行為を指す(宣伝等)。略してプレゼンとも呼称される。
つまり、「相手に情報を伝えて、自分が言いたいことを理解してもらうこと」といえます。
この定義を思い浮かべながら、こちらの動画をご覧ください。
動画に出てくる2人の赤ちゃん、お互いに一生懸命に何か自分の主張を伝えようとしています。つまり、「プレゼンテーション」をしているのです!
このように考えると、人は生まれながらにしてプレゼンテーションをしているといえます。それは同時に、人は生まれながらにしてコミュニケーションを取っているということです。
もう少し掘り下げると、良いプレゼンと良いコミュニケーションは相互補完の関係にあると考えることができます。つまり、良いプレゼンは良いコミュニケーションを生み出すし、良いコミュニケーションは良いプレゼンのベースとなるのです。
プレゼンの基本公式:主張=理由+結論
先ほどの動画のように、赤ちゃんのときは自分が言いたいこと(「結論」)を言うだけでも相手に伝わります。周りの大人たちが、赤ちゃんが言おうとしていることを一生懸命に理解しようとするからです。
ところが、学生や社会人が伝える(=プレゼンをする)となるとそうはいきません。提案、説明、報告など、様々なプレゼンシーンがありますが、自分が言いたいことだけ言っていると”一人よがり”と受け取られ、相手に理解してもらうことは難しくなります。
就職活動で「御社に入社したい」(=結論)と伝えるときは「志望動機」(=理由)が必要ですし、「この商品を買って欲しい」(=結論)と伝えるときは「商品の価値や特徴」(=理由)を伝える必要があります。
つまり、相手に「結論」を理解してもらうためには、「理由」とセットで言うことが必要です。
「主張=理由+結論」を、プレゼンの基本公式として覚えておきましょう!
ココがポイント
- 人は生まれながらにしてプレゼンテーションをしている
- プレゼンの基本公式:主張=理由+結論
第1講|良いプレゼンとは?
こんなプレゼンは嫌だ!
それでは、「良いプレゼン」とは何でしょう?
その答えを考える前に、逆に「どんなプレゼンが嫌か?」を想像してみましょう。この先を読む前に、「こんなプレゼンは嫌だ!」と思うものを思いつくだけ挙げてみてください。
この質問をすると、次のような意見が出てきます。
「こんなプレゼンは嫌だ!」のポイントを大きく分類すると、3つのカテゴリーに分解することができます。
- プレゼンの内容
- プレゼン資料
- プレゼンターの話し方
これらを逆の視点から考察すると、「良いプレゼンとは何か?」が浮かび上がってきます。
聞き手の立場から見た「良いプレゼン」とは、シンプルかつ論理的で、心を動かされるものと言えそうです。
プレゼンの目的を明確にする
「シンプルかつ論理的」と言葉で書くのは簡単ですが、実際に、伝えたいことをシンプルかつ論理的に整理することは、一筋縄ではいきません。いくつかの段階を追って、考えていきたいと思います。
この記事を書いているのは8月中旬なので、ちょうど夏休みシーズンです。会社のお盆休みを利用して、家族旅行に行く方も多い時期です。では、想像してみてください。
質問
「もし、あなたが家族旅行に行くとしたら、どのような手順で計画を立てますか?」
旅行に行くのだから「どこに行くか?」という行き先から考える方、会社の休みに合わせるから「いつ行くか?」というスケジュールから考える方、お財布事情もあるから「いくら以内で行くか?」という予算から決める方、、、いろいろな手順を想像された方がいらっしゃると思います。もちろん、どれが間違いということはなく、すべて正解です。
ただ、ひとつ考えてみていただきたいことがあります。
たとえば、「夫婦の結婚20周年の思い出を作るため」、「子どもに楽しんでもらうため」、「高齢になった両親に喜んでもらうため」など、目的によって、行き先は変わってこないでしょうか?目的によって、財布のひもをどこまで緩めるかは変わってこないでしょうか?
多くの方が意識しなくても行っていることですが、何かを企画するときは「目的」から考えることが必要です。これは、プレゼンや資料作成でも同様です。プレゼンを行うことになったら、まず最初に行うべきことは、「何のためにプレゼンを行うのか?」という目的を明確にすることです。
プレゼンテーション実施までのプロセス
「目的」を少しかみくだいた表現にすると、「相手(聞き手)の心を動かすことで、どのような行動を取って欲しいか?」ということです。商品・サービスの営業プレゼンなら「相手に商品・サービスを購入して欲しい」が目的になりますし、上司への提案プレゼンなら「提案を承認して欲しい」が目的になりますし、NPOがボランティアを募集するプレゼンなら「ボランティアに参加して欲しい」や「寄付して欲しい」が目的になります。
「良いプレゼン」とは?
このように、あらゆるプレゼンには「目的」があります。ときどき、話し手に目的がない(なさそうに感じる)プレゼンに遭遇することもありますが、それは聞き手の時間を奪うことにしかなりえません。
「目的」がある以上、良いプレゼンとは、情報量が多いプレゼンでも、美しいスライドによるプレゼンでも、話し方がスマートなプレゼンでもありません。話し手の「目的」を達成できるプレゼンが、良いプレゼンです。
プレゼンをやろうとすると、デザインに優れた資料を作りたくなってしまいがちです。しかし、相手を自分の期待通りに動かすことができるのなら、資料は裏紙に手書きしたものでもよいのです。
第1講のポイント
- まず、「何のためにプレゼンを行うのか?」という目的を明確にする
- 良いプレゼンとは、目的を達成できるプレゼン=相手の心を動かすプレゼン
第2講|良いプレゼンを作る方法論
それでは、「良いプレゼン=目的を達成できるプレゼン=相手の心を動かすプレゼン」を作るためには、どうすればよいでしょうか?
シンプルで論理的に伝えなければならない!と理解していても、「ようするに何が言いたいの?」とか「ひとことで言うとどういうこと?」と聞かれると、うまく説明できないケースがあると思います。そういうとき、伝えたいことが頭の中で、”こんがらがった糸”のようになっているイメージです。
伝えたいことの原型:こんがらがった糸のように・・・
このように話し手がモヤモヤした状態のまま、”こんがらがった糸”を相手に届けた場合、”こんがらがった糸”を受け取った聞き手は、当然、話し手が伝えたいことを正確に理解することはできません。良いプレゼンを作る最初のステップは、伝えたいことを整理することです。
次に、同じことを伝えるにも、相手によって使う言葉、ツールなどが変わります。たとえば、自社の商品・サービスを薦める場面で、相手が取引先の人なのか、新規顧客なのか、社内の上司なのか、家族や友人なのかによって、伝え方は変わります。良いプレゼンを作る2番目のステップは、伝える相手を想像することです。
最後に、整理された「伝えたいこと」を想像した「伝える相手」の心が動くように伝える伝え方を選びます。プレゼンのストーリーづくりで悩んだり、苦手意識を持ってしまう理由の1つは、この3ステップの手順を踏まず、いきなりスライド資料の作成から始めようとするからです。
このように、相手の心を動かすプレゼンを作るためには、①伝えたいことを整理する、②伝える相手を想像する、③伝え方を選ぶという3ステップで考えていくと、分かりやすいです(3ステップ・プレゼンテーションデザイン)。
3ステップ・プレゼンテーション
step
1伝えたいことを整理する
ロジカルシンキングのフレームワークや、図解の技術を使って、伝えたいことをシンプルかつ論理的に、一言で言えるように整理します。
step
1伝える相手を想像する
ペルソナ分析を使って、伝える相手の属性や価値観など、具体的な人物像を想像します。
step
1伝え方(構成)を選ぶ
プレゼンの目的に応じて、相手(聞き手)の心を動かすアプローチを選びます。
第2講のポイント
相手の心を動かすプレゼンは、①伝えたいことを整理する、②伝える相手を想像する、③伝え方(構成)を選ぶ、という3ステップで作る
第3講|伝えたいことを整理する
ロジカルシンキング
伝えたいことを整理するためには、ロジカルシンキングの基本を知っておくと便利です。
たとえば、30人くらいのビジネスパーソンに向けて、次の3つの質問をしてみる状況を想像してみてください。
質問
① あなたは今、メガネをかけていますか?メガネをかけていませんか?
② あなたは今朝、朝ご飯を食べましたか?朝ご飯を食べませんでしたか?
③ あなたは学生時代に運動部に入っていましたか?文化部に入っていましたか?
①と②の質問については、30人全員がどちらか一方に該当します。ところが、③の質問については、部活には入らずずっと帰宅部だったという人もいれば、運動部と文化部の両方に入ったことがある人もいます。つまり、モレやダブりがあるのです。
ある商品を提案する状況で、「この商品は『今、メガネをかけている方』向けです」と言えば、自分が商品の対象者かどうか間違いなく理解することができます。一方、「この商品は『学生時代に運動部だった方』向けです」と言った場合はどうでしょう。運動部にしか所属したことがない人は自分が対象者であると理解できますが、運動部と文化部の両方に所属したことがある方は、自分はどっちの部にいた時間が長いかな?など、あれこれ考えて迷ってしまう可能性が出てきます。
このように、モレなくダブりがない状況は論理的にわかりやすく、納得感が大きいといえます。ロジカルシンキングの世界では、モレなくダブりもない状況のことをMECE(Mutually Exclusive, Correctly Exhaustive)といい、さまざまなフレームワークを使うときの考え方の基本になります。
プレゼンの骨子づくりに使えるロジカルシンキングのフレームワークの1つに、「ピラミッド・ストラクチャー」があります。下図のように、「一番伝えたいこと」(メインメッセージ)を一番上に書き、それを伝えるために必要なこと(キーメッセージ)を2段目の階層に書き、キーメッセージの「理由」を3段目の階層に書く・・・というように、ピラミッドをてっぺんから作っていくように、「主張」を分解していく手法です。
ピラミッド・ストラクチャー
抽象的なフレームワークで説明すると分かりづらいので、一例として、東京都の行政職員が上司に「認可保育園を増やすべき」という提案をするケースで、ピラミッド・ストラクチャーで主張を分解すると、どうなるでしょうか?先ほどのMECEの考え方を使いますので、説明を思い出しながら読んでください。
「認可保育園を増やすべき」という提案の理由として、「①都内の待機児童数が増加していること」、「②都内でも空き家が問題となっており、開園可能な空き家があること」、「③都知事の方針や都の総合戦略などに合致していること」という3点を挙げたとします。ピラミッド・ストラクチャーに書き込みと、次のようになります。
ピラミッド・ストラクチャーの例:「認可保育園を増やすべき」という主張
では、この提案を上司にしたら、どうなるでしょう。もしかすると、上司から「君の提案も分からなくはないが、保育園を作ったとして、保育士は確保できるのだろうか。保育士の不足にはどう対応するのかね?」と指摘されるかもしれません。つまり、提案の理由にモレがあったのです。「理由」の要素がMECEの状態になっていれば、説得力のある提案をすることができたのです。
このように、何か主張するときは、理由の要素がMECEの状態になっているか?という視点で自分の伝えたいことを整理すると、説得力のある主張ができます。
図解のコツ
それでは、伝えたいことを整理することができたら、どのように資料を作成すればよいでしょうか?
ここでは、PowerPointで作るスライド資料にも、Wordで作る文書資料にも使える技術として、「図解」のやり方をお伝えします。たとえば、次の内容を伝える資料を作成するとします。
例文
当自治体は、超高齢化と出生率の減少に加えて転出者の増加を原因とする人口減少、小学校の廃校などによる子育て環境の変化、近年の予測できない水害や地震に対する防災という課題を抱えています。
このままスライド資料に入れるには長いですし、文書資料を作るために文字数を増やしていくとゴチャゴチャして読みづらくなりそうな予感がします。こういうときは、一度、図を書いてみるのがおすすめです。
上記の例文をそのまま図にすると、「当自治体の課題」として、「①人口減少」、「②子育て環境」、「③防災」という3つが並列になっていますので、次のようになります。
さらに、スライド資料を作るとすれば、説明を加えないのなら左の図、1~2行程度の短い説明を加えるなら真ん中の図、箇条書き形式で多くの説明を加えるなら右の図というように、図解することができます。
このように図解してみることで、論理の破綻なく、スライド資料や文書資料を作ることができます。また、すでに出来上がっている文章等についても、図解してみることで、論理的におかしいところを発見できることもあるので、おすすめです。
第3講のポイント
- 「伝えたいこと」をピラミッド・ストラクチャーで整理する
- 整理した内容を図解してみる
第4講|伝える相手を想像する
話し手と聞き手のギャップ
「専門家の話は難しくて、よく分からない!」と感じた経験のある方は多いのではないかと思います。しかし、もちろん専門家の方たちも、「相手が分からないように話してやろう」と思っているわけではありません。目の前にいる聞き手に向かって話していても、無意識のうちに、鏡に映る自分に向かって話すようにプレゼンテーションをしているのです。
鏡に映る自分にとって一番わかりやすいように話すので、専門用語が多くなったり、前提のところを端折って聞き手を置き去りにしてしまうことが起こります。まずは、この「自分に向かって話している」という”無意識”を意識化することが大切です。言い換えると、相手の心を動かすプレゼンをするためには、伝える相手を想像することが必要なのです。
ペルソナ分析
伝える相手を想像する手法として、「ペルソナ分析」が有効です。
ペルソナ(persona)とは、商品・サービスを利用するユーザーの中で最も重要な人物モデルのことで、マーケティング戦略などを立てるときに使う概念です。性別や年代などの属性だけでなく、職業、嗜好性、価値観、休日の過ごし方など、より深く人物像を描くところに特徴があります。
この考え方を応用し、プレゼンの聞き手のペルソナを作ることで、伝える相手を想像します。たとえば、岐阜県の市町村職員の方が、移住を検討している人に岐阜県の魅力を説明するというケースでは、どのようなペルソナを作ることができるでしょうか。下図は、弊社がプレゼン研修用に開発した「ペルソナカード」を使って分析した例です。
ペルソナの例:岐阜県の魅力を説明するケース
このように、付箋やメモ用紙でも構いませんので、プレゼンの聞き手の人物像(ペルソナ)を思いつく限り書き出してみるのがおすすめです。その中から、プレゼンの目的を達成するキーパーソン、特にこの人に伝えたいと着眼する人物などを発見して優先順位づけをすると、「伝える相手」が明確になります。
第4講のポイント
- 無意識のうちに「自分に向かって話すようにプレゼンをしている」ことを意識化する
- ペルソナ分析を使って、伝える相手の人物像を想像する
第5講|伝え方(構成)を選ぶ
伝え方の2つのアプローチ
伝えたいことを整理し、伝える相手を想像できたら、いよいよ最後の伝え方選ぶステップに突入します。このステップに入る前に、もう一度、次の2点をチェックしてみてください。
① 「伝えたいこと」をシンプルに一言で言えますか?
② 「伝える相手」を明確に説明することができますか?
どちらも「YES」なら、相手の心を動かすプレゼンを作るベースができたといえます。
それでは、もう一度、伝える相手を思い出してください。あなたが伝えたいことについて、いきなり「よし、その通りにしよう!」という方でしたら苦労は少ないのですが、多くの場合、はじめは「無関心」というところからスタートします。そして、そういう話があるのかと「認知」し、ふむふむと内容を「理解」し、自分に関係があることだと気づいて「共感」し、よしやってみようと「行動」するというふうに、階段を上がっていくように話し手の目的に向かって動いていきます。
では、どういう伝え方をすれば、相手はこのように階段を1つずつ上の段に登って行ってくれるでしょうか?
無関心な人に知ってもらう、知っている人に理解してもらうという3段目までは、論理的に分かりやすい説明(論理的なアプローチ)をすれば登ってもらうことができます。しかし、自分ごととして捉えてもらい、具体的な行動に移ってもらうという4段目、5段目を登ってもらうためには、感情を動かす言葉やストーリー(感情的なアプローチ)が必要になります。論理的に正しい説明だけですと、冷たい印象を与えてしまったり、理路整然としすぎて逆に怪しいと一歩引かれてしまうことがあるからです。
共感プレゼンとロジカルプレゼン
この2つのアプローチに合わせて、プレゼンテーションを大きく分類すると、正確に体系立てて説明することを目的とする「ロジカルプレゼン」と、相手の心を動かすことを目的とする「共感プレゼン」の2つに分けることができます。共感プレゼンは”右脳”に訴えかけるもの、ロジカルプレゼンは”左脳”に語り掛けるものというイメージです。
「良いプレゼン=目的を達成するプレゼン=相手の心を動かすプレゼン」を行うとき、無関心の人に行動してもらうことをゴールとすることも多い思いますので、共感プレゼンかロジカルプレゼンかというどちらか一方というより、両方の要素がバランスよく入るプレゼンを行うことになります。そういう場面では、次の構成でプレゼンの骨子を作ることがおすすめです。
おすすめの構成
① 右脳に訴えかける(聞き手を巻き込む)
② 左脳に訴えかける(論理的な説明)
③ 熱意を伝える(話し手自身の想いを伝える)
一例として、先ほどの東京都の行政職員が上司に「認可保育園を増やすべき」という提案をするケースでプレゼンの構成を考えてみましょう。
プレゼン構成の例:「認可保育園を増やすべき」という主張
この構成でプレゼンをすると、次のようなイメージになります。
皆さん、本日はお集りいただきまして、まことにありがとうございます。
今日集まった皆さんで、この地域の待機児童の課題を解決する糸口をつかみたいと思います。私たちの自治体では、認可保育園の設置数を増やすことで、地域の方の理解を得てきた実績がありますので、安心してお聞きいただければ幸いです。
続きまして、私たちが考えた保育園設置計画について、説明いたします。この計画には、(かくかくしかじかの)特徴があり、地域の方にとっても(かくかくしかじかの)メリットがあると考えております。
実は、私自身もこの地域で子育てをして、保育園を探すのにとても苦労した経験があります。この計画を実現することで3年後に待機児童をゼロにし、より暮らしやすい地域にしていきたいと考えております!
第4講のポイント
- 伝える相手に合わせたプレゼンのアプローチを理解する
- 共感プレゼンとロジカルプレゼンをバランスよく行う
第6講|魅せるデザインのコツ
スライドと配布資料のちがい
3ステップ・プレゼンテーションデザインの方法論に沿って、プレゼンの骨子が出来上がったら、資料作成に取り掛かります。
プレゼン資料(スライド)をPowerPointで作るとき、「文字だらけになってしまう」という悩みをお持ちの方は多いです。せっかくシンプルな資料を作っても、職場内で上司や関連部署の決裁プロセスの中で修正されて、漏れがないようにするという理由で文字数がどんどん増えていく・・・という葛藤を感じている方もいらっしゃることと思います。
ここで、まずはじめに意識すべきことは、プレゼンテーションに使う「スライド」と聞き手に配布する「資料」は全く別物であるということです。
「配布資料」は、資料だけで説明しきることを想定しており、配布したあと、受け取った人がどう使うか?誰に見せるか?などをコントロールすることができません。そのため、資料だけが独り歩きしても誤解が生じないように、十分な説明を記載した内容で作成します。
一方、「スライド資料」は、プロジェクターで投影し、話し手が話す内容をより分かりやすく伝わるように補助するためのものです。基本的に、スライドだけがそのまま独り歩きすることは想定しません。そのため、話し手の言葉を補う写真、図表などのビジュアルを入れたり、文字数を可能な限り減らしたシンプルなものを作成します。
「文字だらけになってしまう」とお悩みの方は、いきなり「文字数を最小限に減らしたビジュアル的なスライド資料を作ろう!」としても難しいと思いますので、まずは、「配布資料よりもスライド資料寄りのものを作ろう!」くらいに意識してみるとよいでしょう。
プレゼンにおすすめの文字フォント
PowerPointで資料を作るとき、どの文字フォントが良いのだろう?と迷われる方も多いと思います。
このフォントを使いましょう!という結論の前に、まず、文字フォントを選ぶときの基本的な考え方について、説明します。文字フォントには、「読ませる」ことを目的とするフォント(明朝体)と、「見せる(魅せる)」ことを目的とするフォント(ゴシック体)があります。そのため、作成する「スライド」または「資料」の目的に応じて使い分けることがポイントです。
たとえば、議事録、報告書、各種の説明資料のように、中身を読んでもらうことを目的とする文書をWordで作成するような場合は、明朝体を使います。一方、プロジェクターで投影するプレゼン資料や、先ほど挙げた文書の中でも、タイトル、見出し・小見出し、強調箇所など目立たせたい箇所などでは、ゴシック体を使うとより見やすくなります。
多くの方が使っているフォントというと、Windows標準搭載の「MSゴシック」や「MS明朝」が有名ですが、デザイン性はイマイチです。MSフォントが好みに合わない方には、Windows8以降に実装された「游ゴシック」と「游明朝」がオススメです。
プレゼン資料を作る場合には、「メイリオ」、「Meiryo UI」、「游ゴシック体」、Mac派の方は標準実装されている「ヒラギノ角ゴ」などがオススメです。ときどき、「創英角ゴシック」、「創英角ポップ」を使っている方もいらっしゃいますが、個人的な意見ではありますが、若干古い(ダサい)資料という印象を与えることがあるため、あまりおすすめしてはいません。逆に、親しみやすさなどを伝えたいときに意図的に使うのはありです。ちなみに、私がPowerPointで資料を作る際は、「Meiryo UI」を使っています。
普段、英数字も本文と同じフォントのまま使っているという方が多いと思いますが、英数字フォントもゴシック体と明朝体のそれぞれに合うフォントを使うと、より見やすくなります。ゴシック体には「Arial」、「Calibri」、「Tahoma」など、明朝体には「Century」、「Times New Roman」、「Cambria」などが合います。
とくにおすすめなのは、「読ませる」文書を作るとき、明朝体に合わせて英数字を「Times New Roman」にすると、とても美しく読みやすい資料になります。「Times New Roman」は海外で法律文書などにも使われている有名なフォントですので、安心して使うことができます。
プレゼン資料の文字サイズ
プレゼン資料の文字サイズは、できるだけ大きなものを使いましょう。オススメとしては、タイトル48pt~、小見出し28pt~、本文20pt~24ptくらいの大きさです。本文をこのくらいの大きさの文字で作ろうとすると、文字だらけのスライドになることも防げますの、自然にバランスのよいスライドを作ることができます。
写真の使い方
プレゼン資料(スライド)では、効果的に写真を使うことが有効です。ポイントを3つに絞ってお伝えします。
➊ デザインに迷ったら、大きく使う!
➋ 写真の縦横比を勝手に変えない!(トリミングを使う)
➌ 写真と文字をバランスよく配置する!
グラフの見せ方
プレゼン資料(スライド)では、グラフを効果的に使うことで、より分かりやすいプレゼンを行うことができます。ポイントを3つに絞ってお伝えします。
➊ 伝えたいことに合わせてグラフを選ぶ!
➋ 円グラフは見やすくカスタマイズする!
➌ 図表は罫線を最小限にして出来る限りシンプルにする!
第7講|伝わる話し方のコツ
結論が先、理由が後
ビジネスシーンでも、「まず、結論から話す」と耳にされる機会は多いと思います。そういうときは、「CRFの原則」という言葉を思い出してみてください。これは、C(Conclusion:結論)→R(Reason:理由)→F(Fact:事実)という順番で話す手法です。
CRFの原則
① 結論から伝える、② 理由は3つに絞って伝える、③ 客観的な事実に基づいていることを伝える、という3点に留意して話すと、説得力のある主張ができます。
PREP法とホールパート法
ビジネスで使えるプレゼン手法として、「PREP法」と「ホールパート法」があります。
PREP法
PREP法とは、P(Point:結論)→R(Reason:理由)→E(Example:具体例)→P(Point:結論)という順番で話すというものです。1分間くらいの短いトークから数十分間のプレゼンまで、PREPの構成で話すことを心掛けると、劇的に話しやすく伝わりやすくなります。
PREP法のポイントは、P(Point:結論)を最後にもう一度繰り返すことです。営業の場面であれば念押し(クロージング)となりますし、それ以上に重要な意味があります。
「話しているうちに自分でも何を言っているのだか分からなくなってきた」とか、「本来言いたかったことと別の方向の話になってしまった」という経験はないでしょうか?
こういうとき、最後にP(Point:結論)を繰り返すことで、万が一、途中で話しが支離滅裂になったとしても、少なくとも一番伝えたかったことだけは間違いなく伝えることができます。PREP法を活用するためには、話し手自身が伝えたいことを整理してP(Point:結論)を一言でシンプルに言えることが必要です。
次に、ホールパート法とは、「ホール(全体)」を話したあと「パート(部分)」を伝え、最後に「ホール(全体)」をまとめるというものです。論点が複数ある場面での説明や学会発表などで役に立つ手法です。
ホールパート法
話し方のポイント
話し手が自信を持って話してこそ、聞き手の心を動かすことができます。話し方のコツはたくさんありますが、あんまり多くのことを意識しすぎると逆に緊張してしまうので、はじめて大勢の前で話す人にも特に気を付けて欲しいポイントを3つに絞ってお伝えします。
話し方の3つのポイント
まず、最後の語尾までしっかりと、ハッキリと言い切ることです。せっかく納得感のあることを話していても、文末が「・・・だと思っております。」と声が小さくなっていくと、聞き手は「今の話、信じて大丈夫かな?」と不安になってしまいます。自分が伝えたいことなら、最後の「。」までしっかりと言い切るくらいの心づもりで、「・・・です。!!」と言い切りましょう。
次に、どんな会場でも2階席の一番奥まで声を届ける気持ちで声を出すことです。2階席なんかなくても、です。大勢の前で話すことが慣れていない方によくあることですが、終始ずーっと机の上の自分のパソコンの画面や投影されたスライドに向かって話し続けていることがあります。会場にいる方たちの方を向いて、目を見ながら大きな声で話すのが良いとは分かっていても、なかなか難しいものです。そういうときは、とにかく2階席の一番奥まで声を届けるんだ!という気持ちで話してみましょう。
最後に、声にメリハリ(強弱)をつけたり、話すスピードをコントロールすることです。会場にいる人全員が熱心に聞いてくれていると感じられるときは良いのですが、「イマイチ話が届いていないような気がする」というときは、声をあえて小さくしたり、黙ってみて間を作ったり、すごくゆっくりと話したりしてみましょう。「ん?なんだ?」という感じに、聞き手の方たちの顔が上がり、話に関心を持ってくれます。
聞き手を飽きさせない手法として、もうひとつ、プレゼンの合間に「皆さんなら、どうしますか?」、「~を想像してみてください」などの問いかけを入れることも有効です。
このときのポイントは、問いかけたら反応を期待してしまうものですが、相手が答えてくれることを期待しないことです。むしろ、大勢を相手に行うプレゼンでは、反応はないものと思って問いかける方が良いでしょう。
たとえ目に見える反応がなくても、一瞬、聞き手の方たちが「ん?なんだろう?」と立ち止まって考えてくださることに意味があります。一度、自分で考えることで、そのあとの話を自分ゴトとして聞きたくなるからです。そのためにも、反応がなくても焦らず、立ち止まって考える時間は十分に取ることが大切です。
問いかけ以外にも、プレゼンの中で「間」を取ることは重要です。「間」は長すぎるくらいでちょうど良いので、ギリギリまで長く待つとよいでしょう。
プレゼンの時間管理
プレゼンを行うとき、通常は持ち時間が決まっていることが多いです。そのときは、時間を”秒”単位までこだわって、ぴったりと終わらせることを目指しましょう。準備した話が終わっていないとき、「数分なら延長してもよいだろう」というのは話し手の都合です。万が一、プレゼンの途中でどうしても準備した資料の全部を話し切ることはできないと気づいたときは、優先順位の高い箇所を中心に話し、終了時間になったら「これで本日お話することは以上です。」と言って、プレゼンを終了しましょう。
時間がおさまりきらない、または、時間が余ってしまうということにならないよう、プレゼンの準備段階では、プレゼンテーション全体の時間配分を的確に行うことが大切です。「ここからここまでが何分」、「このテーマが何分」など時間配分を決めておき、予定とずれてきたときに、どこをカットするかを決めておくと、安心して登壇することができます。
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